岐阜県の社会保険労務士事務所の飛騨屋社労士事務所です。
皆様よく耳にする就業規則ですが、労働条件を決定する職場のルールブックといえるものです。
当事務所HPの業務内容にも就業規則の事を書きましたが、もう少し詳しく記事にしていきたいと思います。
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就業規則とは
就業規則とは、簡単に言うと「職場のルールブック」です。
所定労働時間や休日、賃金をはじめ服務規律など労働者の労働条件や待遇を就業規則に定めておきます。
労働条件は労働契約によって使用者と労働者が合意することにより決定しますが、 多くの労働者を雇用している会社では 労働条件のすべてを労働契約に寄るは難しく、就業規則にて労働条件を統一的、画一的に設定し、かつ職場規律を規則として設定しておくことが就業規則の目的となります。
合理的な労働条件が定められており、かつ従業員に周知されている場合、その就業規則は従業員の個別の同意がなくても雇用契約の内容になります。
会社で定めている就業規則が法律に沿っているかが重要になりますので、会社と社会保険労務士が話し合いながら、就業規則を作成することをおすすめします。
就業規則のその他の目的は?
就業規則を定めるその他の理由として 会社の秩序を守るため、トラブルが起きたときや未然に防ぐためなどの理由があります。
一つ目の会社の秩序を保つためについて、就業規則には服務規律が定められており、 就業中はどういった風に働くかを就業規則に定めることにより、従業員に対して社内の規則を明確に提示できます。
トラブルについては以下にて解説いたします。
就業規則作成は労務トラブル予防
就業規則を作成、改定、周知する事は社内でのルールを明文化する事になります。
・ハラスメントに関するトラブル
ハラスメントに関しては就業規則に規定を設けなければなりません。 就業規則にハラスメント対策を規定することにより、トラブルの予防につながります。
・労働時間・休暇に関するトラブル
長時間残業や休業日、 有給休暇に関する問題も就業規則に規定していないとトラブルにつながります。 有給休暇については、働き方改革によって 就業規則に記載しなければいけない事項が定められています。年間5日以上の有給休暇の取得の条文を就業規則に定めていないことにより労務トラブルに発生することも考えられます
・解雇に関するトラブル
解雇については就業規則に条文を定めないと不当解雇として訴えられる可能性があります。 特に懲戒解雇については就業規則に懲戒規定を設けなければ なりません
社会保険労務士に委託する事で法律に沿っている規則となり、労務トラブルの予防にもなります。
就業規則の整備は労務トラブルの対策
10名以上となっており、労務トラブルが発生してから就業規則を作成、または就業規則を改定していてはトラブルに対応できない場合があります。
就業規則を作成してから1年以上改定していない場合、現在の法律に沿っていない場合も同様です。従業員との労務トラブルに発展した場合に、就業規則が整備されていない為に本来解決できていたトラブルが、拗れてしまう場合があります。
就業規則の作成、改定を社会保険労務士に依頼しておけばよかったとなってしまう前に、就業規則の改正情報を提供が可能な、社会保険労務士にご相談ください。
就業規則が必要な時期は?
常時10人以上の従業員を雇用している場合、労働基準法 第89条により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督 署長に届け出なければなりません。就業規則を変更する場合も同様です。
要件に該当する場合は社会保険労務士にご一報頂き、就業規則の作成をしましょう。
就業規則は会社で作れるの?
就業規則は会社の労働条件のルールブックですので作成が可能です。
作成に専門的な法律知識が必要になりますので、就業規則に詳しい方がいらっしゃる場合は問題ありませんが、原則的には社会保険労務士に委託して、就業規則の作成をする事をおススメ致します。
自社にて就業規則を作成される場合は、社会保険労務士に相談しながらや、社会保険労務士が出版している就業規則に関する書籍、厚生労働省のモデル就業規則、弁護士さんの出版している就業規則に関する書籍を参考にされると良いかと存じます。
就業規則を作成したら会社は変わるのか?
結論から言いますと、「就業規則を作成しただけでは変わらない」です。就業規則の周知だけでは足らず、就業規則の運用時をしっかり行っていく事が大切です。
「就業規則ってどこにあるの?」「就業規則の内容がよくわからない。」等の声が良くあります。事業主や管理監督者の方就業規則を理解し、従業員に対し就業規則の内容に沿った労務管理を行う事が必要になります。
就業規則をしっかりと運用する事によって、従業員の方にも就業規則に記載されている服務規律や所定労働、休暇等の制度の理解が進み会社の秩序が守られていきます。
就業規則の作成後、就業規則の改定後は従業員の皆さんに理解を深めて頂くために、就業規則の社内説明会を行うことをおススメします。
就業規則は一度作成したら終わり?
就業規則・その他附則類について、法律が改正されることが多く、就業規則の最新化が必要になります。
現在の会社のステージによっては就業規則の改定が必要になります。
スタートアップ時は評価制度もないので就業規則内の賃金規則もアバウトなものになるでしょうし、規模が大きくなれば人事制度を導入する為に就業規定の改定、就業規則に休職関係等の運用時に必要な項目が記載されていなかった場合の改定が必要になったりと、実は何かしら毎年改定を行った方が良い場合もあります。
就業規則が大丈夫か気になる場合は社会保険労務士に相談頂ければリーガルチェックを実施致します。
就業規則と雇用契約書どちらが優先するのか
原則としての優先順位は次の図の様になります。
そして合意のある労働契約で就業規則と、雇用契約が異なる場合雇用契約が優先されます。根拠としては契約法7条但し書きに記載があります。
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
労働契約法7条(労働契約の成立)
次の場合は雇用契約が優先されるわけではありません。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
労働契約法12条(就業規則違反の労働契約)
ただし、賃下げ等で就業規則より下がった場合でずっと異議を言わない場合は「黙示による同意」が成立する可能性がありますのでご注意ください。
労働協約が優先される根拠
労働協約は、憲法28条に定める団結権に基づいて団結し、使用者と対等な立場で交渉した結果なので優先されます。
就業規則の効力
就業規則での効力として、「労働基準法」「労働契約法」に基づく効力があります。
就業規則が大事な理由は図の通りで、職場の実態に合わせず労基署に作成提出するだけでは有事の際に、就業規則が職場の労働条件のルールブックとしての機能が果たせないからです。
労働基準法第92条第一項に基づき法律に違反した就業規則があった場合は、法律に違反した部分が無効となります。
就業規則は従業員の労働条件が定められている重要な規定となっており、法律に違反した就業規則が存在すると労務トラブルにつながります。時と場合によっては労働裁判になることも可能性としてあります。
ですので作成、届出は社会保険労務士に任せるのが安心といえる訳です。
就業規則の最低基準効とは?
就業規則が適用される従業員に関する労働条件の最低基準のことです。
労働契約法第12条では企業と労働者の合意があった場合でも就業規則に定められている基準より低い条件が締結されている場合その合意は無効となります。
すなわち就業規則の中の規定が最も低い労働条件ではないなければなりません。
個別の労働契約の内容に合意している場合でも、就業規則の規定を下回ることはできません。
就業規則には何を記載するの?
■就業規則の絶対的必要記載事項は次のとおりです。
- 労働時間関係 始業及び終業の時刻
- 休憩時間
- 休日
- 休暇、交替勤務の場合は就業時転換に関する事項
- 賃金関係、賃金の決定、計算及び支払いの方法
- 賃金の締切り及び支払いの時期、並びに昇給に関する事項
- 退職関係、退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)
■就業規則の相対的必要記載事項は次のとおりです。
- 退職手当関係、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算方法並びに退職手当の支払いに関する事項
- 臨時の賃金・最低賃金額に関する事項
- 費用負担関係
- 労働者に食費、作業用品そのた負担させる事に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償・業務外の傷病扶助関係
- 表彰・制裁関係 表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
- その他 事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項
どういった事を記載すればいいか、または現在ある就業規則が要件を満たしているか社会保険労務士にご相談頂ければと思います。
就業規則の構成
就業規則は総則、服務規律・懲戒、労働条件、業務命令権・人事権で構成されています。
就業規則は「就業に関する規則」という言葉の意味からも、服務規律という従業員の行為規範が規定されており、服務規律の中には労働者の就業の仕方及び、職場のあり方に関する規律、入退場から遅刻欠勤など、離席、服装であったり職務専任規定であったり、上司の指示命令への服従義務などが規定されています。
企業財産の管理保全のための規律もあります。
会社財産の保全、消耗品の節約だったり物品の持ち出し流用の禁止などです。さらには会社施設の利用の制限、終業後の職場滞留の制限など、会社の施設を利用しての会合宣伝活動の許可制などがあります。
従業員としての地位身分による規律も、就業規則に定められています。
信用の保持、兼業の規制、公職立候補など秘密保持などが具体例として挙げられます。
懲戒権は企業秩序の維持をが目的とされています。 就業規則に懲戒権を規定することにより、経営目的とする組織体としての企業が必要とし、実施する従業員に対する統制の全般を守ることができます。
労働条件については就業規則に統一的、画一的、網羅的に規定することによって労使が労働条件を合意するということです。
業務命令権・人事権 については、会社を円滑に運営して行く為には労働者に対しいろいろな業務命令や人事権を行使することがあります。具体例は業務執行命令権などを就業規則に規定します。
就業規則の種類、付則
一口に就業規則といっても様々な規定から成り立っております。
代表的なものを図に致しました。
就業規則の一部を別規定にする理由は?
就業規則を一つにする事も可能ですが、就業規則内の各条文ごとに適用対象を定めていく事が必要になります。
そして一部改定などの際は、就業規則の全て見直しが必要になる等が出てくる為、就業規則の一部を別規定にすることをします。
社会保険労務士に依頼する場合も就業規則を様々な規定に分ける事によってスムーズに作成が可能となります。
就業規則を別にする例は?
従業員の中に正社員と契約社員。パートアルバイトなどの非正規社員といったように、異なる労働条件で就業する場合、従業員それぞれの労働条件を反映させた就業規則の作成が望ましいです。
正社員就業規則、非正規社員就業規則の間で 出勤日、就業時間、賃金の決定の方法、賞与の有無、退職金の有無、昇給の有無など異なる部分については 一つの就業規則で運用しようとせず、それぞれの就業規則を作成すると労務トラブルが未然に防ぐことにつながります。
さらに可能であれば正社員就業規則、契約社員就業規則、定年再雇用就業規則、アルバイトパート就業規則、というように分ける場合もあります。
分け方については就業規則に詳しい社会保険労務士にご相談ください。
就業規則作成の手順
就業規則の作成手順を図にすると次の様になります。
就業規則の届出
就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する使用者が作成しなければなりません。
作成した就業規則は社内に設置しておくだけではなく、行政官庁に届け出をする必要があります。
就業規則や別規定などの内容を、法改正や規則変更、助成金対応に伴って変更したときも届出をする必要があります。
就業規則を作成変更した場合届出を行う先は 労働基準監督署となります。
届け出の期間は、就業規則を作成後「遅滞なく」届出を行うこととされています。
本社以外に事業所がある場合は 事業所ごとに就業規則を作成し、 各事業所を管轄する労働基準監督署に、就業規則を届出しなければなりません。
就業規則を届出する場合は「就業規則」「就業規則(変更)届」「意見書」の三点を提出します。
就業規則の作成届出は、社会保険労務士の独占業務となっています。
就業規則の周知方法
会社が就業規則を作成した場合、就業規則を従業員に周知して初めて就業規則の効力が発揮できるようになります。
就業規則を新規で作成した場合に限らず、改訂した場合も就業規則を労働者に周知しなければなりません。
労働基準法106条第一項 に定められている就業規則の具体的な周知方法としては、
- 常時各作業場の見やすい場所へ就業規則を掲示しまたは備え付けること
- 従業員に書面で交付する
- 磁気テープ磁気ディスクその他これらに準ずるするものに記録し かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
①の各作業場とは、事業場内において建物が別にある場合、建物ごとに就業規則を備え付けるということになります。
③については就業規則の内容をパソコンで 確認できるようにすること等を言います。
労働契約法7条、10条にも就業規則の周知が定められています。
7条は「使用者が、合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた 場合に」としています。
10条は就業規則による労働条件の不利益変更を定めています「変更後の就業規則を周知させ」と周知を就業規則の効力発生のための手続き要件としています。
周知について社会保険労務士にご相談頂ければどうしたらいいか相談にのって頂けます。
まとめ
就業規則の専門家である社会保険労務士がまとめてみましたがいかがだったでしょうか。
厚生労働省のモデル就業規則を基に作成ももちろんいいのですが、専門家である社会保険労務士と共に相談しながら作成する事をおススメ致します。
就業規則に関するお問い合わせは、飛騨屋社労士事務所にご一報ください。
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